「お疲れ様です」「ご苦労様です」の使い方。目上の人に使うのは?
さて、「お疲れ様です」「ご苦労様です」、目上の人に使っていいのはどちらでしょうか。
どちらも同じような意味だから、どちらでもいい?
もしかしたら、どちらもNG?
急に聞かれると、迷ってしまいませんか。
今回は、「お疲れ様です」と「ご苦労様です」の使い方についてです。
・「お疲れ様です」「ご苦労様です」はどんな時に使うの?使い方は?
・上司や目上の人に使うのは「お疲れ様です」「ご苦労様です」どっち?失礼にあたらないのは?
・「お疲れ様です」「ご苦労様です」を英語で言うと?海外でも使い分けはある?
「お疲れ様です」「ご苦労様です」の意味は?
「お疲れ様です」は、相手の労苦をねぎらう意で用いる言葉ですね。
「ご苦労様」も、同じく、苦労をねぎらっていう言葉です。
どちらも、挨拶としては同じような意味を持っています。
ただし、「ご苦労様」は「御苦労」の丁寧語としての一面もあります。
御苦労には、「ご苦労をおかけします」のように、苦労そのものを肯定的に捉えた意味合いの他に、「誰も喜ばないのに、ご苦労なことだ」のように、苦労の成果がなくむだにみえることを、表す場合に使うときもあります。
この使われ方は、嫌味っぽいので、あまりいい意味ではありませんね。
「お疲れ様です」「ご苦労様です」はどんな時に使うの?使い方は?
旧来の使われ方
旧来の日本の価値観では、目下のものが、目上のものを「ねぎらう」習慣がありませんでした。
ですから、「お疲れ様」も「ご苦労様」も、もっぱら、目上の者が、目下のものをねぎらう時に使われたとされる説があります。
身分の差があり過ぎて、たとえねぎらいの意味であっても、目下の人が、意見を言う雰囲気でなかったのかもしれませんね。
ご苦労様の使われ方
もう一つの説は、「ご苦労様」は、時代と共に使われ方が変化したという説です。
江戸時代から、明治初期までの書物を調べると、目下のものが目上の者に対して「ご苦労」と挨拶しています。
逆に、お殿様から家来など目下のものは、「大儀であった」と言っていたようです。
時代劇でよく聞くお殿様のセリフですね。
明治維新の後、「大儀であった」は、古めかしいということで、軍隊では、上官から部下に対して「ご苦労だった」が使われ始めます。
侍言葉を嫌ったという一面もあったのかもしれません。
大正時代には目上の者が使う言葉として、「御苦労」が主流になりました。
ただし、「ご苦労さま」が目上から目下もの者に対するあいさつであるとはっきりと辞書に書かれ始めたのは、1980年以降です。
1988年の『学研国語大辞典』に、「ご苦労」は「目上の人に言うのは失礼とされる」という記述がされました。
お疲れ様の使われ方
「お疲れ様」の起源ははっきりと分かっていないようです。
『日本国語大辞典』には、
1.夕方から夜にかけての挨拶の言葉。こんばんは。(長野県諏訪郡)
2.おつかれさん 新潟県新津市・中頚城郡
3.午後、人に行き逢った時の挨拶の言葉。(山梨県東山梨郡)
とあります。
もともとは、疲れているであろう夕方以降のあいさつだったようですが、全国的に広まるうちに、夕方以外でも使う挨拶になったのでしょう。
ただし、こちらも、ごく最近まで、上の立場のものが目下のものに使うあいさつ表現であるとされていました。
変化が見られるのは、2000年以降。
2000年以降から出版された辞典では、「お疲れ様」は目上の人への挨拶とされています。
上司や目上の人に使うのは「お疲れ様です」「ご苦労様です」どっち?失礼にあたらないのは?
旧来の言葉の使い方では、「お疲れ様です」も「ご苦労様です」も、両方ともが上司や目上の人に使ってはいけない言葉です。
しかし、現在の使われ方としては、「お疲れ様」は、目上の人に使ってもよいと考えられてきているようです。
秘書検定でも、目下のものから目上に対しては「お疲れ様です」を使い、目上から目下のものに対しては「ご苦労様です」を使うのがよいとされています。
「お疲れ様です」「ご苦労様です」を英語で言うと?海外でも使い分けはある?
「お疲れ様です」も、「ご苦労様です」も、かなり日本的な表現です。
英語に直訳すると、「You did good job!」「Well done!」「It was great!」「Good work!」など、「よくやった!」というような表現になってしまいます。
何か、やり遂げた時に「お疲れ様」「ご苦労様」という時には、適した表現です。
ただ、挨拶に使う、「お疲れ様」「ご苦労様」のニュアンスとは違いますね。
挨拶としては、適した言葉がありませんから、「Hello!」「How are you?」「How’s it going?」などを使うとよいでしょう。
旧来は、目上の人には、どちらもNG。
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「お疲れ様です」と「ご苦労様です」の違いについてでした。
使い分けとしては、
「ご苦労様」は目上の人に使わない方がよい。
というのが、ポイントでした。
ただし、旧来は、どちらも目下のものに使う言葉だったということは、いちおう留め置いた方がいいでしょう。